──翡翠10歳──



「ていゃっ!!はっ!!」

声と同時にゴン!バシっ!!と木と木がぶつかる音が鳴り響く。

「せいゃぁぁぁあっ!!!」

その声と同時に持っていた木刀を横にめいいっぱい腕を伸ばし顔の前に掲げ、グッと目を瞑った。



"コツンッ"


頭にわずかな痛みを感じそーっと目を開けると、目の前には勝ち誇った様に仁王立ちしながらこちらを見下ろし勝ち誇った顔が1つ。


「翡翠に俺が負けるわけないだろ??何回やったって一緒!!やるだけ無駄無駄!!」

「そんな事分からないであろうっ!?ある日突然私が勝つことだってっ」

「ないっ!!!」

そう言って再び木刀が顔の真ん前に伸びてきた。


「大体、翡翠が戦に行くことなんてないんだしこんな特訓する必要ないだろ?第一翡翠、そなたはおなごだ。」


「むぅ…」

私は膨れっ面で睨みつける。

「緑(りょく)だけ、戦にに行くなど許さん!私も共に行くのじゃ!!」

「はいはい…。戦が起こればね。現王になってからは戦のいの字も無いけどな。」

面倒そうに頭をかきながら、緑は縁側に腰掛けた。


いつも軽くあしらわれる。
2つ年上の緑。

父の側近、実次(さねつぐ)の1人息子である。
緑と私はいつも一緒に遊んでいた。泥まみれになったり、血を出して城に帰って来ると、必ず緑は実次に叱られていた。

そりゃそうだ。私はこの国の姫なのだから…。
緑は叱られても叱られても私と遊んでくれた。
無論、遊びに誘っているのはいつも私の方だ。

緑からしたら、姫である私の誘いを断れない…。
そう思っているのかもしれない。