「じ、自分で言って赤くなんないでよ……」


「……うるせぇ」


「……見てるよ、斉藤くんだけを」




横を向いてしまったその横顔を見上げて言うと、パッと私を見て頭をグシャグシャにされた。


反抗する間もなく私の横を通り過ぎて、ギャラリーから出て行く。




なんかマンガのヒロインになったみたい。



斉藤くんしか見えない。





バスケの決勝、さっきみたいに大きな声は出すことができない。



斉藤くんばっかで、周りの声も聞こえなかった。




本当に呼吸を忘れるくらい、斉藤くんだけになってしまった。





『俺だけ見ろよ』




なんて王道なセリフ。


気分はすでにヒロイン。



そんなのもうあなたしか見ないに決まってる!