「やめとけよ」
「……え?」
「付き合うなよ。
お前は……」
1歩前を歩いていた斉藤くんが振り返る。
驚いて目を見開くと急に手首を掴むと引っ張られた。
「……浴衣、似合ってるってずっと思ってた」
「……へ?」
いま言う?
ありがたいけど、タイミング違うよね?
「あ、ありがとう……」
「おう……。
じゃあな」
家の前まで来るとそう言って、私の背中を押して振り返れば手を振ってくれた。
玄関の明かりで斉藤くんの顔がやっと見えたけど、作り笑いみたいななんとも言えない表情だった。
私はもう一度送ってくれたことに対してお礼を言って、手を振って玄関に入った。