びっくりしすぎて声も出なかった。
急いで顔を上げるも、斉藤くんはすでに歩いて遠くまで行ってしまっていた。
は、速すぎる……。
小さくなった後ろ姿を見つめて、両手で頬を包む。
私が呼んでほしいって言ったから?
でもあのタイミングって。
ほんと、ずるい人だ。
バクバクとうるさい心臓。
いまも耳に残ってる甘い響き。
初めて呼ばれた名前はいままで呼ばれたどんなものよりよく聞こえる。
最近、私の心臓がよくうるさくなる。
斉藤くんはもう見えない。
また会える。
いつでも会える。
そう言われたのに、もう寂しくなっている自分がいる。
早く斉藤くんに会いたい。
今日は本当に楽しかったから。
今度はふたりで、ゆっくり斉藤くんとお話して、たくさん斉藤くんのことを知りたいな。