やっと離してもらえたと思えば、頭はぼーっとして、息を止めていたことに気づく。
酸素をめいっぱいに取り込んで、バクバクする心臓を落ち着かせようと深呼吸を繰り返した。
「お前のファーストキス、忘れんな」
私の頬を両手で挟んで、無理やり目を合わせると真剣な顔で言われ、顔がいっきに熱くなる。
なにこれなにこれ。
いままでに感じたことないほど恥ずかしい。
心臓がうるさい。
ドキドキしすぎて気持ち悪い。
こんなにドキドキしてることを気づかれないように両手で顔を隠す。
「……斉藤くんも初めてのくせに」
「……ほっとけ」
「……初めてのくせに、なんでキスの仕方知ってるの。
初めてのくせに」
「……何回も言うな」
「……なんでそんな余裕そうなの」
「……余裕なんてねぇよ」
ぼそっと言った言葉は私には聞き取れなかった。