本当はずっと誰かに聞いてほしかった。

ひとりで抱えるには重すぎて苦しかった。

秋との関係をよく知っている恵理に聞いてもらおうかと思ったけど、幸せいっぱいの彼女にそんな話ができるわけもなかった。

鼻をすすり、はあっと息を吐く。

「…あのね、好きな人とあと2ヶ月…ううん、もう実質1ヶ月半以内に別れなきゃいけないの」

俯いていて見えないけど、向かいに座る2人が固まったのは雰囲気でわかった。

ざわざわと騒がしい店内で、私たちの席だけがしんと静まり返る。

「…それは決定事項?どうにもならないの?」

「うん」

「詳しい事情は聞いちゃダメ?」

友香の控え目な問いかけに、ここまで話した以上、全部話してしまうことにした。

思えばこうやって言葉にするのは初めてで、どう説明すればいいのか少し迷って頭の中を整理した。

「…彼はもうすぐ政略結婚するの。
12月に婚約者と対面する。
だけど本人にはそれを知らされてなくて、12月までに私は彼と別れなきゃいけない」

「政略結婚ってことは、偉い人なんだよね。
彼氏、同じ会社の人なんでしょ?
社長の息子が働いてるのはウチの課の噂で聞いてる」

ドキッとしたけど、否定するのはやめて小さく頷いた。

お手上げだ。友香には敵わない。

葉山は目を点にして、私と友香の会話についてこれていないようだけど。