19時ごろ仕事が終わり、葉山とラインで連絡を取って1階ロビーの脇で待ち合わせをした。

「おう、お疲れ様。
ごめん、ちょっと遅くなった」

「ううん、全然平気。ありがとね」

もしかしたら私に合わせて早めに仕事を切り上げてくれたのかもしれない。

だとしたらますます申し訳ないな。

「昨日そいつがいたのもこのくらいの時間?」

「ううん。昨日は6時半くらいだったから、今日はいないかもしれないけど…」

社員通用口へ行く前に、ロビーのパーテーションの影から外を覗くと…

…いた。

一体いつから待っているんだろう。

「あーあいつか」

私が教える前に葉山は気づいたようだ。

こんなふうに遠目だと余計に怪しく見える。

スマホを握りしめてキョロキョロし、フラフラと足踏みをしているようなおかしな姿。

通りを往来する人からも不審に見えているに違いない。

「いかにもって感じだな。
大丈夫、任せとけ」

胸をたたく葉山がこんなに頼もしく見えたことはない。

2人で通用口を抜け、正面玄関前に出たら、私を見つけた彼はやっぱり話しかけてきた。

「あのっ待ってました。
俺と付き合ってください」

昨日はアドレス交換したいと言っただけだったのに、エスカレートしている。

それだけで恐怖で立ちすくんでしまう。