南口の端では、すでに友香が肩で息をしながら待っていた。

「ちゃんと巻けたみたいだね。
何なのあの人」

「今朝落としたスマホを拾ってあげただけだよ」

言いながら、私は情けないくらい泣きそうになっている。

友香が一緒にいてくれなかったらどうしていいかわからなかった。

「早く改札出ちゃおう。
ウロウロしてて探されたら困るし」

「うん」

幸いにも友香とは帰りが同じ方向の電車だ。

2人で周りを警戒しながら電車に乗って家路に着いた。

落としたスマホを親切心で拾っただけなのにあんなことになるなんて、おかしなご時世だ。

アパートに帰ったあと、友香からは『大丈夫?』とラインがきていた。

返事とお礼を返して、ヒールで走ってピリピリと痛む靴擦れに絆創膏を貼った。