「子供が考えそうなことだなあ」

秋に呆れられながら、5本まとめて束にして火をつけてみた。

オレンジの粒はさっきよりずいぶん大きい。

だけど、それはたくさんの光を放っている最中に重みでボトッと落ちてしまった。

「あーやっぱりダメか」

「線香花火は儚いからいいんだろ?」

くすくすと笑いながら、秋が一本花火に火を灯す。

暗闇の中で、オレンジの光が秋のやさしい表情を映し出した。

かっこいいとかかわいいとか、そんな感情ではなく、きれいだなと思ったのは初めてかもしれない。

だけど、その顔はほんの少しの時間で消えて見えなくなってしまった。

「加奈、どうしていきなり線香花火?」

「…花火がしたかったの」

「もう花火の季節じゃないよ?」

「うん。わかってるからやりたくなったの」

なんだそれ、と秋が笑う。

秋は何も気づいてはいないだろう。

それでいい。

だけど、線香花火は失敗だったかもしれない。

感傷的な気持ちを余計に煽ってしまう。

少し涙が浮かんだけど、それはオレンジの光と闇に隠れて、秋の目に触れることはなかった。