秋はやっぱりまだ知らない。

専務になるときには、自分の隣に別の女性がいることを。

スラックスが濡れてしまうと思い、涙を拭いながら起き上がった。

「…嫌か?」

不安げな秋の声に、かぶりを振った。

「…ううん。嬉しい」

秋はホッとしたように私を抱きしめて、その温もりにますます苦しくなる。

嬉しいのは本音だ。

だけど同時に、やめて!と叫び出したくなる。

だってそんな未来、来るわけないじゃない……