明日は休みだけど、二次会の話に乗る人が少なかったため、結局みんなその場で解散となった。

「加奈、泊まりに来る?」

みんなの姿が見えなくなったあと、秋が問いかける。

「ううん。洗濯物たまってるし、今日は帰るよ」

「そっか。俺が飲んでなかったら送ってやれるんだけどな」

「大丈夫だよ」

本当は一緒にいたい。

だけど、今秋といたら私はきっと泣いてしまうだろうし、全てを話してしまいたくなる。

そんなわけにはいかない。

秋が将来担っていく会社のために、私ができることなんて、社長の言うことを聞くことくらいしかない。

見送ってくれる秋に、タクシーの窓から精いっぱいの作り笑いをして手を振った。


アパートに帰ったあとはすぐにシャワーを浴びた。

よく考えたら、今日は乾杯の1杯すら飲み切れなかった。

痛いのは胸なんだろうか。胃なんだろうか。

とにかくどこかがジクジクと痛んで食欲がわかない。

髪の毛も乾かさないままローソファに横になり、スマホで日付を確認する。

今日は9月30日。

12月に婚約者と対面ということは、晴くんの言う通り、あと2ヶ月半。

いや、12月に入ってすぐということであればもう2ヶ月しかない。

「秋…」

秋には届かない。

聞こえない。

そんなことはわかっているのに。

心から溢れ出てしまった想いは、言葉となって空気に馴染んで消えていく。

「離れたくないよ…」