週末、通販部の飲み会が開催された。

「はい、みんなお疲れ様―!
かんぱーい!」

「カンパーイ!」

定番のポテトフライや唐揚げ、いかにも身体に悪そうな脂っこいメニューが並び、居酒屋らしい独特の匂いがただよってくる。

普段なら食欲をそそられるこの匂いに、今日はなぜか吐き気がする。

部全体だから参加人数は15人以上いるけど、向かいと隣は仕事で話をする機会が多い女性たちだ。

お酒が入っていることもあり、流れは恋愛トークになる。

戸田さんは30歳で同棲している彼がいるらしく、プロポーズ待ちで歯痒いのだという。

秋と同期の真野さんは、合コンで恋人ができたばかりらしい。

「水原さんはどうなの?」

「私は彼氏いないんです」

「そうなの?かわいいのにもったいない。
合コンとかは?」

「いやあ、合コンって苦手なんですよね。
友達づてでいい人に出会えるといいんですけどねえ」

当然こんな話をする気分ではないけど、愛想笑いで返す。

「ウチの弟でよければ紹介するわよー」

戸田さんの言葉にちょっと焦りながら、曖昧に笑ってごまかした。

戸田さんの2つ隣に座っている秋には聞こえているかもしれない。

「まあ、水原さんはまだ若いからね。
出会いはこれからいくらでもあるわよ」

「…だといいんですけどね」

苦笑いをしながら、まるで秋と別れた後のことを言われているようで、痛む胸をぐっとおさえた。