「恵理はどうなの?勇人(ゆうと)くんと」

「私は…普通。何にも変わりなし」

「結婚しないの?」

「だって向こうが言ってくれないから…」

口を尖らせて急に声が小さくなる恵理に、思わず吹き出した。

「な、なによー!」

「恵理、かわいい。恋する乙女だね」

恵理は赤くなってコーヒーのストローを一気に吸い込み、ビールを飲んだ時のように「はーっ」と息を漏らした。

恵理は3年付き合っている同い年の彼氏、勇人くんと同棲している。

彼は美容師をしていて、恵理と似たような恰好を好む人だ。

紹介されたときはあまりのインパクトにフリーズしてしまったくらいだけど、性格はとても穏やかで、恵理のことをすごく想っているのが伝わってきた。

派手な見た目同士の2人だから歩いていれば周りの注目を浴びるけど、お似合いではあるのだ。


「でも、何気に誕生日に期待してるんだー」

「あ、そっか。来週だもんね。ありえるんじゃない?」

「うん。そう思ってる」

どこか確信に似たような言い方をして、恵理は照れくさそうに、えへへっと笑った。

一緒に暮らしていて、そんなニュアンスを感じ取れるシーンがあったのかもしれない。

『子供は当分いいけど、結婚は早くしたい!』

恵理は勇人くんに出会う前からずっとそう言い続けていたから、友人として、彼女の願いが叶ったらいいなと切に思う。