「執行役員?ってよくわかんないけど、なんかかっこいいね」

ザックリした感想が恵理らしいな、とクスリと笑う。

「いつ重役になるのかはまだわからないの?」

「うん、上の事情はサッパリ。
秋も知らないみたいだし、私も特に聞かないし」

「ちゃんと突っ込んで聞いてみればいいのに」

「別の会社だったら聞けるかもしれないけど、自分の会社だからね。
平社員の私がどこまで首を突っ込んでいいのかわからない」

「そういうもん?」

恵理はなんだか腑に落ちない様子で首を傾げる。

そもそも私には、社長の息子が身分を隠して平社員として経験を積むのが普通のことなのか、重役の細かい組織図がどうなっているのかもわからない。

秋は贅沢な暮らしをしているわけではないから、住んでいるマンション以外に御曹司である実感が湧く要素がないというのもある。