その足で晴の元へ向かった。

晴は少し不安げに俺を見上げたけど、また俺がこんなふうに訪ねてくることは予想していたようだった。

部屋の外の壁に寄りかかって、先に口を開いたのは晴のほうだった。

「うまくいったの?」

「…なんであんなことしたんだ。
下手したらお前がどうなってたかわからないんだぞ」

泣きそうな顔で晴は笑った。

「俺…加奈ちゃんが好きな男と幸せになるのを見たくないって言ったけど、加奈ちゃんを不幸にしたかったわけじゃないんだ。
なのに俺は自分のことばかりで、どんどん弱っていく加奈ちゃんを見て見ぬふりしてた。
ひよりさんの人柄なんてわからないから賭けだったけど、彼女の気持ち次第では、まだ間に合うと思った。
うまくいくかわからないから、兄貴に期待を持たせるようなことも言えなかった。
ごめん、兄貴。…ごめん」

消え入りそうな声で俯く晴は、きっと泣いている。

その姿に、俺も涙が滲んでいく。

思わず晴を抱きしめて、頭をくしゃくしゃっとなでた。

「…バカだなお前。…ありがとう」