ところどころ文字が滲んでいるのは、加奈が泣きながら書いていた証拠。

誰かに見せようと思って書いたものじゃないんだろう。

なのに、まるでラブレターのようで、加奈の想いが詰まっていた。

はあっと息を吐いて、零れかけた涙を瞳の中に閉じ込めようと上を向いたけど、それでも溢れた涙は目尻をつたって流れていく。


なあ、加奈。

『疲れている時に食べてね』と渡されたチョコは、疲れている時よりも、加奈に会いたいと思った時に食べていた。

10個入りの高級そうなチョコはあっという間に減っていって、もう1つしか残っていない。

最後の1個はもったいなくて食べられなくて、今度加奈と半分こして食べよう、なんて思っていたんだ。

きっと加奈は、おいしそうに食べて笑ってくれるから。


単調に過ぎていく日々の中に加奈がいてくれること。

加奈が俺の名前を呼んでくれること。

俺が加奈の名前を呼ぶと、加奈が微笑んでくれること。

本当は、当たり前じゃなかったんだよな。

すごく幸せで、尊い時間だったんだよな。

どうして人はそういう大事なことを忘れてしまうんだろう。


加奈。

愛してるって、また言わせてほしい。

加奈と一緒にいることが何よりの幸せなんだって伝えたい。

もう一度加奈をつかまえたら、もう絶対に離さないから。

また俺の隣で笑って。

加奈……