ベッドは大学時代から使っているセミダブルサイズのもの。

2人で寝るにはもう少し広いほうがもちろん楽だ。

だけど私たちはいつもくっついて眠っているから、秋が大学院を終えてここに引っ越してくるときも、ベッドを買い替えることはしなかった。

ここ数日の残業ですっかり疲れてしまった私は、ベッドに横になるなりすぐに睡魔に襲われた。

いつもと同じくらいしか飲んでいないのに、思ったより酔ってしまったのかもしれない。

それに気付いたらしい秋が髪をなで、

「おやすみ加奈、また明日」

と静かに囁く。

もう半分夢の中にいる私も、いつものように

「おやすみ秋、また明日」

と返し、手をつないで眠りに誘われた。



――この平凡ながら温かい日々を失うことになるなんて、この時の私はまだ、知らなかった。