特別なことは、意外と浮かばない

ただいつも通り

一緒にご飯を食べて

テレビを観て笑って

ソファで肩を寄せ合って

たくさん抱きしめて

たくさんキスをして

髪の毛をなでて

その温かい胸に顔を埋めて

眠るときはおでこをくっつけて、手を繋いで

『おやすみ、また明日』って囁いて

私の前でだけ、子供みたいな寝顔を見せて

眠そうな顔で、甘い声で『おはよう』って言って

時々晴くんにヤキモチを妬いて

『エトワール』で乾杯をして


秋の声が好き

だから"加奈"ってずっと呼んでほしい

何十回でも、何百回でも、何千回でも

きっと私は、飽きもせずにそれを愛おしいと思う

ずっと"秋"って呼んでいたい

秋の名前が大好きだから

名前を呼ぶだけで、元気が出るから

私の唇は、秋の名前を呼ぶためにあるんだ


最後にもし勇気が出せたら…

ずっと聞きたかった言葉がある

時々甘い言葉をくれる秋も、この言葉だけは言ってくれたことがないから

"愛してる"って

一度でいい

聞かせてほしい


ありふれた日々に秋がいてくれることが、私にとっては一番幸せだったということ

『当たり前』なんてものはどこにもなくて

秋と同じ気持ちで一緒に過ごせる日々は、『奇跡』だったんだということ

今さら気づくなんて遅すぎるけど

これから時間が許す限り

ただ何気ない日々を、できる限り秋と一緒に過ごしたい

秋の笑顔を、声を、温もりを、全部忘れないように

その記憶を焼き付けて、ひとりでも立ち上がって生きていけるように

最後に笑って、さよならできるように