葉山とまた加奈の部屋を訪れた時、加奈はまだベッドに横になっていた。

ペットボトルの水がテーブルに置いてあるから、一旦起きてまた眠ってしまったんだろう。

きっとそうとう疲れているんだと思う。

この2,3ヶ月、加奈はずっとつらい思いをしながら、それでも秋さんの前では無理して笑っていたんだろうから。

寝言で名前を口にして泣いてしまうくらい、加奈にとって秋さんは大切な存在だ。

5年間も互いを想い合ってきたふたりが、こんな形で引き裂かれるなんて非情すぎる。

ベッドに眠る加奈を見ながら、買ってきたお惣菜やゼリーを後ろで物色している葉山に問いかけた。

「…ねえ葉山」

「んー?」

「私がしようとしてることは間違ってると思う?」

葉山には、私が何をしようとしているのか説明していない。

あの紙のことも知らない。

だから答えを期待していたわけじゃない。

なんとなく問いかけてみただけだ。

だけど少しの沈黙の後、ふっと笑う声が聞こえた。

「友香が大事な友達を想ってすることが、間違ってるわけない」

躊躇いのない力強い声。

胸の奥に言いようのない感動が溢れる。

こういうところだ。

私には葉山が必要なんだと思う理由。

葉山を愛おしいと思う理由。

「…葉山。好きだよ」

「え?何?いきなり」

ひょこっとうしろから葉山が私を覗き込む。

「しーっ!加奈が起きちゃうでしょ?」

葉山は嬉しそうにニヤニヤ笑っている。

今、私の前から葉山がいなくなったら私はどうなるだろう。

きっと耐えられない。

そう思ったら、やっぱり加奈のためにできる限りのことをしたいと思った。