届いたコーヒーの香ばしい匂いに、今朝加奈と一緒に食べた朝食のトーストとコーヒーを思い出す。

最近の加奈はおかしかった。

季節外れに線香花火なんかしてみたり、突然大学に行ってみたり。

やっぱりマンネリだったんだろうか。

体調を崩してあんなに痩せて、もしかして俺と別れることをずっと悩んでいたんだろうか。

胸の奥がざわざわする。

加奈にもう二度と会えないような、嫌な予感が走る。

「…ごめん、ちょっと電話してくる」

席をはずして、加奈の番号をもう一度祈るようにタッチする。

相変わらず機械的な女性の声しか聞こえない。

だけど、さっきと少し違う。

『電源が入っておりません』じゃない。

『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』

目の前は真っ暗で、もう瑞樹の元へ戻るのすら精いっぱいだった。

真っすぐに歩けているかどうかもわからない。

「どうだったんだ?」

「瑞樹…菜乃ちゃんに、加奈に連絡してみてほしいって頼んでくれないか?」

「え?」

訝し気な顔をする瑞樹にうまく説明できる自信もない。

何が起きているのか、俺にはさっぱりわからない。

結局、菜乃ちゃんも恵理ちゃんも、加奈の番号にはつながらず連絡が取れないと言った。