――秋――



"別れよう"

頭が真っ白になった。

何が起きたのか全く理解できないまま、雑踏に紛れた加奈の姿はすぐに見えなくなった。

路駐を見張る警備員が近づいてきたから、否応でもその場を離れるしかなくて、とりあえずUターンしてスーパーの駐車場に車を停めた。

スマホを取り出し、すぐに発信履歴の一番上をタッチする。

5コール鳴ったあと、やっとつながったと思ったら、淡々とした女の声が流れた。

『現在電波の届かない場所にいるか、電源が入っておりません』

電波の届かないところになんかいるわけない。

加奈はついさっき駅にいたはずなんだから、電源を切っているのだ。

冗談であんなことを言うはずがない。

どうして…

さっきの言葉を反芻すればするほど、頭の中が混乱していく。