幾度となく一緒に眠った秋のベッドも、もう最後だ。

自分の部屋よりも寝心地がいいと思っていたけど、それは秋が一緒だからであって、ベッド自体が気持ちいいわけじゃないのかもしれない。

そんなことに今更気づく。

「だいぶ寒くなったけど、やっぱりこうやってくっついてるとあったかいな」

「そうだね」

社長から話を聞かされた頃はまだ薄い掛け布団だけで済んでいたのに、今は毛布も引っ張り出している。

温かいし気持ちいいけど、やっぱり人肌の温もりには敵わない。

秋の胸に顔を埋める。

いつもは気にならない時計の秒針が、今日は妙に耳について私の心を焦らせる。

どんなに願っても時間は止まってはくれない。

…もう、タイムリミットはゼロに近い。

覚悟を決めて顔をあげたら、暗がりに慣れた目が、私を見下ろす秋のやわらかい表情を映し出した。

涙が出そうなのをぐっとこらえながら、私もそれに応えるように微笑み返した。

「…秋、今日はいっぱいして?」

「…どうした?」

「なんとなく。そんな気分」

秋は何の気なしにハハッと笑う。

「じゃあ覚悟しといて」

最後の最後は、やっぱり全身で秋を感じたい。