ソファに横になってテレビを観ていたら、秋がシャワーから上がって来た。

「加奈、ここで寝るなよ?」

「うん、わかってる。秋、ここに来て」

起き上がって、隣の座面をぽんぽんとたたく。

秋が隣に座り、私は彼の肩に頭をもたれた。

「この体勢なら、私は寝ないから。
電車とかで座ったまま寝る人いるけど、器用だよねえ。
私にはできない」

秋がクスクス笑って肩が揺れた。

「そんなに無理しないで、眠いなら寝室で寝てもいいんだよ?」

「もうちょっと秋とくっついてたいの」

秋の右手の指が私の指に絡まって、ぎゅっと握りしめた。

頭の上に、秋の頬がコツンと当たる。

「なんか気持ちいいな」

秋の呼吸とシャンプーの香りを感じて目を閉じる。

残り少ない時間を…その幸せを噛み締めながら。

「…加奈」

「ん?」

「またちょっと忙しくなりそうなんだ。
土日も出勤が続きそうだから、しばらく会えなくなるかもしれない」

「…うん。わかった」

仕方ない。秋はもうすぐ専務になるんだから。

その準備で忙しいんだから。

からめた指に力を込めた。

もう11月も下旬だ。

できれば最後にもう一度会いたい。

晴くんに相談してみよう。

「…秋、眠いけど、もっとくっつきたいな」

ふっと笑い声が降ってくる。

「いいよ。大歓迎」

頬に啄むリップ音を立て、耳たぶを食んで、そのまま首筋へと舌が這っていく。

今夜も裸でくっつきあって眠るんだろう。

朝はもう冷え込むけど、秋がいたら、寒くないよ…