僕は日本についてからすぐに実家に向かった。





休暇といっても長期間も取らせてはくれない。




町の雰囲気は10年経った今でも全く変わっていなかった。



家の前に着いた。






僕はゆっくりと玄関のドアを開けた。





今日は休日なので親は二人ともいるはずだ。





「…奏太…。」





ドアの音に気づいたのか母がリビングから出てきた。




母はすごく驚いていた。





留学中の息子が連絡もしないで帰ってきたら驚いて当然だ。





休んでる暇はない。





僕はすぐにリビングの方へ行った。





そこには父もいた。




「話したいことがあるんだ。」




僕は二人に向かってそう言った。





二人はだいぶ混乱しているだろう。




「ごめん、時間がないんだ。」




僕は椅子に座った。




母は僕のを見てからずっとたしつくしているが、父が僕のへの前に座ったのを見て母が父の隣に座った。





帰国前から聞きたいことは決まっている。




「兄ちゃんが死んだときのこと、教えてほしい。」





僕は今までこんなことの言ったことは一度もない。





この話をすると悲しい顔をすると思ったから。





思った通り、二人の顔はわかりやすいほど悲しげな表情を浮かべた。





本当はこんな顔を見たくなかったが、しょうがない。





どうしても聞かなければならないことだから。




でも、父は違った。




父の表情が明らかに変わった。




ついにこの時が来たか





そう言っているように思えた。




父は立ち上がり、引き出しの中から一枚の紙を取り出した。




そして、その紙を僕の目の前に置いた。




そこには、名前と電話番号と住所が書かれていた。





「この人に会って来い。この人が全てを知ってる。」