「界君!」
教室に行くまでの長い廊下で界君に会う。
「あぁ、星野。はよ」
「おはよう!ちょっと先行ってて」
心ちゃん達を先に教室へ行かせる。
「あの…」
「仲直りしたんだ。よかったな。あの時、なんかかっこよかった。俺が登場する場面じゃないと思って下がって見るくらい」
私の言葉を遮って界君が言う。なんか様子が変?
「そうなの!見てたんだ。それもこれも界君のおかげだよ。界君がいなかったらこんな勇気でなかったもん!」
「俺のおかげじゃねぇよ。お前が変えたんだ。お前が頑張ったから変わったんだ。俺はなんもしてねえ」
「いやいや、そんなことないって!本当に界君のおか…」
「んなわけねえって言ってるだろ!」
「…ごめん」
界君が怒ってる?私、なにかしちゃったのかな。私のせいだ。
「あ。ごめん。急に怒鳴ったりして。じゃあ俺、行くから」
「…」
界君、どうしちゃったんだろう。
いつもと様子がやっぱりおかしいよ。
でも私、彼女でもないのに心配したりしちゃダメかな?
「夏織!おはよう」
湊だ。朝から本当に元気だな。
「湊、おはよ」
それに比べて私は元気ないかな。
界君、どうしちゃったのか気になってて。でも、色んなことがいい方向へ変わったのだから元気がないわけではない。
「夏織、顔赤いよ?」
「えっ」
私は頬を手で覆って目をそらす。
「熱か?」
トンっ…
「ひぇ?」
湊の右手には私の前髪。湊のおでこには私のおでこ…
「顔近いよっ」
いくら幼馴染の湊でも恥ずかしい。なんかゴミついてないかな。そんなこっち見ないでよっ。湊がじっと私を見つめるからきっと余計顔が赤くなっているはず。
「熱はない…な」
「そ、う…」
遠ざかった湊の顔をちらっと見る。
「湊、顔、赤いよ?」
「まじ?夏織の熱がうつっちゃったのかも」
ぎこちない会話。照れてばっかいる私達の間を何かが通る。
「風?」
自然と出た言葉が湊の周りにはてなをつくる。
「風?どうしたの?いきなり」
「なにか通らなかった?」
「通ってないよー」
嘘だ。絶対なにか通ったもん。でも風じゃない気がする。
ま、まさか…お、ば、け!?
「ひゃーーー!!湊!早く行くよっ!」
「なんだよ!?」
今度は逆の立場。私が湊の手を引っ張って走る。
「おば、おば…」
「こば?こばえ?」
「ちがうちがう!…ばけ。おばけっ!」
半泣きになりつつも私は必死に訴える。
「んー?そば家?」
湊、絶対からかってるやねん!
「湊のばけー」
「ばけ?俺、化けなの?」
間違えた。バカと間抜けが混ざっちゃった。絶対バカにされる。
「そ、そうだよ。湊はほんとバケモンみたいだもん!」
頑張って誤魔化す。
「だよな!俺、化け物みたいに完璧だもんなー」
「うわー、この人自意識過剰ー…」
「俺は自意識過剰はいいと思うけど」
「私も思うわ」
「なんだこの会話。さすが夏織!」
「いやー、そんな褒められても照れちゃうじゃん!」
「似合わねー」
いつの間にか止まっていた足もすごく笑っています。湊と話すと私の全身が笑う。
*
「あぁ、くそ。ほんとあいつといると調子狂う」
「へー。界にもそんなやつできたんだ」
「兄ちゃん!今の聞いてたのかよ」
「おう、バリバリ聞いてた。界も喜怒哀楽あるんだな」
「人並みにある。兄ちゃんもあるだろ?」
「ある…お前にだけは言ってみてもいいかな……」
*
「夏織っ!界君と何話してたの!?」
教室へ入ると心ちゃん達が追求してくる。
「え?ただお礼言っただけだけど…?」
「付き合っててそれ!?つまらないなぁ」
待って待って。私、界君と付き合ってるってことになってんの!?
「私、界君と付き合ってないよ?」
「嘘おっしゃい。あんだけ界君がほっとかないのは夏織だけだよ」
でも、よくよく考えてみると一番界君と親しいかもしれない…!そりゃあ疑われるかな。
「つか、夏織やばいよ?界君ファンが黙ってないから…今激おこ中…」
「えーと…どうしよう…まず付き合ってないし…」
「とりあえずそう言えばいいよ!もしそれでも何かされたら心達が助けるから」
「頼もしい味方だな…本当にありがとう」
「そういえば、その中に華奈いるんだよ?」
突然、私の心臓が飛び出るくらいにはねる。ドクンドクンと私の心臓が何かを押しつぶすようにしてくる。きっとそれは今の幸せ。
「あ、夏織!?どこ行くのー?」
私は怯えてすぐにトイレへ駆け込む。
鏡を見ると青ざめた顔。
私は幸せを取り戻したと思ってた。なのに、何かが足りないの。何かが…
ガチャっ…
「はぁはぁ…夏織…どうしたの?」
「心ちゃん!?あ、ごめんね。急に飛び出してきちゃって」
「全然大丈夫だけど…」
深入りしちゃいけないかと思ったのか心ちゃんはそのまま黙り込んだ。
「教室戻ろっか」
こんな沈黙がいたたまれなくなって事情も何も言わずに私達は教室へ戻った。
教室に行くまでの長い廊下で界君に会う。
「あぁ、星野。はよ」
「おはよう!ちょっと先行ってて」
心ちゃん達を先に教室へ行かせる。
「あの…」
「仲直りしたんだ。よかったな。あの時、なんかかっこよかった。俺が登場する場面じゃないと思って下がって見るくらい」
私の言葉を遮って界君が言う。なんか様子が変?
「そうなの!見てたんだ。それもこれも界君のおかげだよ。界君がいなかったらこんな勇気でなかったもん!」
「俺のおかげじゃねぇよ。お前が変えたんだ。お前が頑張ったから変わったんだ。俺はなんもしてねえ」
「いやいや、そんなことないって!本当に界君のおか…」
「んなわけねえって言ってるだろ!」
「…ごめん」
界君が怒ってる?私、なにかしちゃったのかな。私のせいだ。
「あ。ごめん。急に怒鳴ったりして。じゃあ俺、行くから」
「…」
界君、どうしちゃったんだろう。
いつもと様子がやっぱりおかしいよ。
でも私、彼女でもないのに心配したりしちゃダメかな?
「夏織!おはよう」
湊だ。朝から本当に元気だな。
「湊、おはよ」
それに比べて私は元気ないかな。
界君、どうしちゃったのか気になってて。でも、色んなことがいい方向へ変わったのだから元気がないわけではない。
「夏織、顔赤いよ?」
「えっ」
私は頬を手で覆って目をそらす。
「熱か?」
トンっ…
「ひぇ?」
湊の右手には私の前髪。湊のおでこには私のおでこ…
「顔近いよっ」
いくら幼馴染の湊でも恥ずかしい。なんかゴミついてないかな。そんなこっち見ないでよっ。湊がじっと私を見つめるからきっと余計顔が赤くなっているはず。
「熱はない…な」
「そ、う…」
遠ざかった湊の顔をちらっと見る。
「湊、顔、赤いよ?」
「まじ?夏織の熱がうつっちゃったのかも」
ぎこちない会話。照れてばっかいる私達の間を何かが通る。
「風?」
自然と出た言葉が湊の周りにはてなをつくる。
「風?どうしたの?いきなり」
「なにか通らなかった?」
「通ってないよー」
嘘だ。絶対なにか通ったもん。でも風じゃない気がする。
ま、まさか…お、ば、け!?
「ひゃーーー!!湊!早く行くよっ!」
「なんだよ!?」
今度は逆の立場。私が湊の手を引っ張って走る。
「おば、おば…」
「こば?こばえ?」
「ちがうちがう!…ばけ。おばけっ!」
半泣きになりつつも私は必死に訴える。
「んー?そば家?」
湊、絶対からかってるやねん!
「湊のばけー」
「ばけ?俺、化けなの?」
間違えた。バカと間抜けが混ざっちゃった。絶対バカにされる。
「そ、そうだよ。湊はほんとバケモンみたいだもん!」
頑張って誤魔化す。
「だよな!俺、化け物みたいに完璧だもんなー」
「うわー、この人自意識過剰ー…」
「俺は自意識過剰はいいと思うけど」
「私も思うわ」
「なんだこの会話。さすが夏織!」
「いやー、そんな褒められても照れちゃうじゃん!」
「似合わねー」
いつの間にか止まっていた足もすごく笑っています。湊と話すと私の全身が笑う。
*
「あぁ、くそ。ほんとあいつといると調子狂う」
「へー。界にもそんなやつできたんだ」
「兄ちゃん!今の聞いてたのかよ」
「おう、バリバリ聞いてた。界も喜怒哀楽あるんだな」
「人並みにある。兄ちゃんもあるだろ?」
「ある…お前にだけは言ってみてもいいかな……」
*
「夏織っ!界君と何話してたの!?」
教室へ入ると心ちゃん達が追求してくる。
「え?ただお礼言っただけだけど…?」
「付き合っててそれ!?つまらないなぁ」
待って待って。私、界君と付き合ってるってことになってんの!?
「私、界君と付き合ってないよ?」
「嘘おっしゃい。あんだけ界君がほっとかないのは夏織だけだよ」
でも、よくよく考えてみると一番界君と親しいかもしれない…!そりゃあ疑われるかな。
「つか、夏織やばいよ?界君ファンが黙ってないから…今激おこ中…」
「えーと…どうしよう…まず付き合ってないし…」
「とりあえずそう言えばいいよ!もしそれでも何かされたら心達が助けるから」
「頼もしい味方だな…本当にありがとう」
「そういえば、その中に華奈いるんだよ?」
突然、私の心臓が飛び出るくらいにはねる。ドクンドクンと私の心臓が何かを押しつぶすようにしてくる。きっとそれは今の幸せ。
「あ、夏織!?どこ行くのー?」
私は怯えてすぐにトイレへ駆け込む。
鏡を見ると青ざめた顔。
私は幸せを取り戻したと思ってた。なのに、何かが足りないの。何かが…
ガチャっ…
「はぁはぁ…夏織…どうしたの?」
「心ちゃん!?あ、ごめんね。急に飛び出してきちゃって」
「全然大丈夫だけど…」
深入りしちゃいけないかと思ったのか心ちゃんはそのまま黙り込んだ。
「教室戻ろっか」
こんな沈黙がいたたまれなくなって事情も何も言わずに私達は教室へ戻った。
