「次、入って。」






ドンドンと周りの人が行ってしまう。時間って長いようで短い。




「(次、私だ……)」





緊張して、周りの音が聞こえない。
そのせいで、鮮明に自分の心臓の音が聞こえて余計に緊張感が高まる。









「次、どうぞ。」





大丈夫大丈夫大丈夫。








いつも通り、上手くやり過ごそう。










どうやって扉を開けたかなんて忘れた、気づいたときにはプロデューサーと話していた。そして、プロデューサーの周りにはなぜかクラッシャーがいた。






「(ソジュンくん…!!いや、見ちゃダメ。集中。)」





「君のことは、大体あの双子モデルに聞いたから。歌かダンスが上手だったら合格にするつもり。スタイルとかもいいし。で、曲は?」




いや、スタイル良くないし、もし仮に良く見えたとしても、顔が悪かったらダメじゃないですかね。


「曲は…自分で作りました。」




プロデューサーさん、マネージャーさん、クラッシャーは肩をピクッと揺らす。



父親が趣味で曲を作る人だったから、自分も作ろうって作った時のことを思い出して作った。







ほら、また結局。父親の名前が出てくる。








USBに入った曲を流してもらい、歌った。






私の声に合った曲。
私の想いが詰まった歌詞。

私だけの曲。








相当高いキーと相当低いキーがある。
ラップも入っていて、歌っていると楽しくなる。






もっと。








もっと。










今まで、スポーツだけが私の生きていける場所って思ってた。






でも、ここでも飛べる。







そう思ったオーディションだった。











歌い終わったときには涙を流していた。
小説とか映画とかでもすぐに泣いちゃうタイプだから。






「へー。すごいじゃん。」


と拍手をしてくれるクラッシャーのイソンくん。





「(イソンくん、可愛すぎる!!)」







ソジュンさんの反応がみたくて、チラッと見ようとすると、






「次は、ダンス。」







プロデューサーさんに遮られてしまった。





昨日、双子達と練習したけど、どうしてもうまく行かないところがあったんだよな。





そこが1番の鍵。










音楽鳴り始めると、自然と体も動く。



はじめは簡単なステップから。















ちょうど乗ってきたところで、






「(1番難しいところがくる…!)」




恐る恐る、足を踏み出す。







「「おおー…!!」」




やった!成功した!!





達成感がすごい。
気持ちいい。








ラストまでノーミスでクリア。







「普通ここで言うことじゃないけど、」





プロデューサーさんが口を開く。



ダメだった…?

不安で心がきゅっとなる





「みいちゃんだっけ?合格。歌もダンスも最高!」





え?







合格してしまった。