私が恋した愛しい彼。

双子がマネージャーから話を聞いている間、クラッシャーを探したけどやっぱりいなかった。


廊下でウロウロしていると、



「君、見たことないね。うちの新人のスタッフか何か?」



後ろから声がすると思い、声がする方へ振り返ると、どんっと体格の良い男の人がいた。



「(あ、クラッシャーの動画でみた。プロデューサーさんだ。)」



近づいてジロジロと見てくる。


「あの、私は千聖ちゃんと聖くんの友達でっ…」



ぎこちない韓国語だからか、プロデューサーさんは顔をしかめている。




まさか、私疑われてる?!
ぎこちない韓国語だし、見知らぬ顔だし。
それに、あの双子が芸名使ってるとしたら、そんなやついないって言われて、私逮捕されるよね?!
不法侵入って!


双子さん、助けてー。





「日本人か?」


「はい、そうです。」



1歩1歩ジリジリと近づいてくる。
そのたびに、私も1歩ずつ下がる。



「歌とかラップとかダンスとかできるか?」



な、何を言いだすのかと思えば。。



まぁ、できないことはないけど。

ダンスは双子と私で、双子が転校する時までやってたし。
ラップは趣味で独学だけど。
歌はどうだろ。


「私は、基本何でもできます。」



そう、これが今の私。
完璧女子を目指した結果。



「ほう。ここの事務所では週末にオーディションをしている。今週末、気が向いたら出てみないか。」





え?
私が?


と、そこにちょうど双子がきた。



「「あれー、プロデューサーだ。」」





状況がわかったかのように、ニヤニヤと近づいてくる。


「どう?プロデューサー。私が言った通り、可愛いですよね?」


自慢げに双子の妹が肩を組んでくる。


「みいもモデルいけますよね?」


さらに双子の兄が肩を組んでくる。







「モデルよりもアイドルとか歌手とか女優が似合いそうだが。」




まってまって。


話がどんどん進んでくけど、

私はそんなのしないよ?!


「「んじゃ、アイドルにしましょう!クラッシャーさんが男性アイドルだったので、次は女性アイドルがいいかと!」」




良くないよね。
と、心の中で呟く私。

廊下のど真ん中で話をしているから、ほかの人の迷惑になっている。



「そうだな。でも、歌声も何も聞かないでアイドルにする訳にはいかないから、週末にきてくれ。」


後ろを向き、手をヒラヒラと振るプロデューサーさん。


「いや、ちょっと…!」



私は無理です。



と、言おうとしたのに、双子から口を勢いよく塞がれた。




「アイドルになれば、クラッシャーのソジュンさんに近づけるチャンスだよ!」





そりゃ、そうかもしれないけど。











ソジュンさんと…。











それに、アイドルになればみんなに愛される?