…そしてまた、ある時


少女は標的の人間に妙な感情を抱いてしまった。

その人間は教会に住む青年だった。闇と光は相対すればその身を滅ぼす。

少女は教会の青年に近づいた。自身の気持ちは伝えることができない。

──声がなかったからだ。

青年は「力」を持っていた。少女が近づいても消えることがなかった。

少女が声を失っているのに気づいた青年は、その「力」で少女に声を与えた。

少女は驚愕した。だが、直ぐに絶望の色が目に浮かんだ。

言いたいことの反対の言葉しか、口に出せなかったのだ。

半数以上の「力」を使ってしまった青年はとうとう、少女の持つ「闇」に侵され倒れ、弱り、やがてもうここに戻ることはなかった。

少女は再び口を閉じた。がむしゃらに「仕事」をずっとし続けた。

男は少女を理解しようとしなかった。何故標的に情などを抱いたのか。そんなことを教えたことはなかった。

少女の心は壊れつつあった。知らずに青年に「愛」を覚えていたからだ。


…ふと、少女は姿を消した

愛する人に会うためか、憎き賊を探すためか。あるいは、すべてを終わらせるためか…