「ごめんって。ほら、もうこの際だからさー、もう片方も開けよ!」
イタズラな笑みを浮かべながら、
また私に凶器を見せつけてくる仁。
「片側だけとか、クソだせぇから。ほら、耳貸せよ。」
「その“クソだせぇ”姿になったのは、誰のせいよ。」
大きなため息をつきながら、
意を決して仁に身を委ねる。
「もう、どうぞご自由に。」
バチン
音と共に耳たぶに痛みが走る。
そう、凶器の正体はピアッサー。
「さ、ピアス買いに行こうぜー」
嬉しそうな笑顔ではしゃぐ仁は
言葉遣いも、人相も悪いけど
昔の可愛かった仁と同じだった。
「まだつけられませんけどね。」
「いいんだよ。やっとお揃いでつけれるようになったんだから。」
何年も前から何度もしつこく
「お揃いでつけたい!穴開けて!」
と言われ続けていた。
ピアスホールもない私の誕生日に
ピアスをプレゼントしてきたこともあった。
でもね、
自分の身体に穴を開けるだなんて恐ろしい事
私にはとてもじゃないけど出来なくて
ずっと拒み続けてきた。
それなのに、
仁に寝込みを襲われ
24年間大切に大切に守ってきた私の耳は
呆気なく傷物になってしまった。