君が本当にこの世界からいなくなる前の日、僕に問いかけた。

「君は、僕が死んじゃったら…どう思う?どう、する?


そう言った君の声は今までのどんな時よりも真剣で、僕の心を締め付けた。

「死なせないよ。」

「どうやって?」

僕は押し黙った。思えば、あの質問が君からの最後のSOSだったのだ。

「今日は、もう帰るね。」

「さよなら。」

いつも君はまたね、と言って帰るのにさよならと言った。

今を逃したらきっと会えなくなる。そう分かっていたのに僕はまた逃げた。

消え入りそうな声の助けを聞こえないふりした。

そのときの僕には、傷とあざだらけの君の背中が見えなくなるまで、見つめることしかできなかった。

次の日、君は本当にこの世界からいなくなった。

昨日の質問が、君との最後の会話だった。

君の両親は刑務所に入った。

過去の僕は逃げ続けた。

君が虐待を受けていたことなんて、分かっていた。

でも、連れ出す度胸なんて過去の僕は持ち合わせていなかった。

それに、本当に死んでしまうなんて考えてもいなかった。

甘かったんだ。弱かったんだ。

君をどれだけ思っても、好きでいたって帰ってこない。

「会いたいよ…」

「もし、もし時が戻せたら…どれだけいいだろうか」

そう葬式で僕は静かに泣きながら呟いた。