「間宮。間宮 清!(まみや きよ)」

先生が私の名前を呼ぶ。



「はい。」

「お前、最近遅刻ばかりだな。
しっかりしろ。そんなことばかりしていると、あとあと大変なんだからな。それともなんだ、家で何かあるのか?」

「いえ、なにもありません。」

先生たちは知っている。私の家はとても厳しいのだ。毎日、勉強、勉強、勉強。
授業態度は悪くても成績はいいもんだから、先生たちは何も言えない。

「そうか。ならできるだけ遅刻はしないようにな。」

ほら、また。そうやってわたしを追いやってく。

「あいつまた遅刻かよ」
「遅刻してもおこられないからいんだよ笑笑」
「ふん、さすがガリ勉ジミ子。朝から勉強バリバリしてるんで遅刻ですってか」
「先生もガツンといえばいいのにぃ」
「「ねぇーっっ!」」
「遅刻するくらいならもう私学校こないけどなあー」
「俺らと同じ授業じゃな、レベルも違うし、遅刻してもよゆーだろ」
「てかもう、授業うけなくてもな笑笑」


教室に入ると、いつもこの騒ぎだ。私の耳に届くように、少し大きめの声で話す彼らの意図は手に取るようにわかる。
遠回しに、私に学校に来るなと言っているのだ。

私は少しうつむき気味に、自分の席へと向かう。長い前髪が、私の視界を遮る。こうすることで、周りからは、あたかも私が傷ついているかのように見えるのだ。
実質傷ついてなんかいない。もう慣れた。いつもの事だから。