沙也加が残念そうに聞くと、聖はノートを出してきた。
沙也加は聖の行動を不快に思った。
「この状況で勉強でもするの?」
「ちげーよ。これに寺崎について書いてあるから。あのくそババアの手紙にああ書いてあったし、一応マークしとこうと思っていろいろ探ったんだ」
沙也加は嬉しそうに聖に抱き着いた。
「ありがとう! 聖君って意外といい子なのね」
いきなり沙也加の態度が変わり、聖は戸惑った。
そして、助けを求めるかのように栞のほうを見た。
しかし栞はきれいに聖を無視し、ノートを持って部屋を出た。
「ふざけんなよ、おい!」
聖の叫び声は部屋の外まで響いた。
栞は近くの階段に腰かけ、ノートを開いた。
寺崎家
寺崎大地
横暴。
とにかくうるさい。
こいつが原因で二階には誰も住まわないし、ここの部屋には誰も近寄らない。
ちょっとしたことに文句をつけてくる。
自分の言うことには誰でも従うとか思ってる勘違い野郎。