「いいから、この女君の為に、召し物を用意し給え。」

御前失礼、と倭が自分の荷物のある場所に行って、すぐに何かを抱えて参る。

「これを、姫君に。あたくしが着ようと思って持って参りましたが、まだ、袖を通しておりません。」

薄色(薄い紫色)等の袿や単衣、葡萄染めの長袴を手渡した。

「うむ、ご苦労。」

「あたくしが、畏れ多くも、お召し替え致しましょう。」

倭は少し大きめの几帳を持ち出して来て、その場で着替えさせた。

「終わりまして御座います。」

と、倭は几帳を退けて、久光に見せた。