「ねぇ。」

藤の君は、近くにいた倭にふと話しかけた。

「私、憾むわ。」

「誰を?」

「北の方を。」

倭は首を傾げた。
北の方と藤の君に、面識はなかったはずだ。

「昨日ね、夢で見たのよ。北の方。あんな女が北の方なのね。見た時、とてもじゃないけれど、信じられなかったわ。」

「そうですよね………あの人、あたくし達よりも身分が低いくせに、北の方として無理矢理振舞っているので、空回りしているのですよ。」