(本当、苛苛するわね。侍女達は、よく、出来るわ、こんなこと。大変じゃなくって?)

藤の君は、ついに装束をほいと女房に手渡して、一人愚痴っている。

「お前達も、大変ねぇ。これを、縫わなくてはならぬとは。」

女房は少しして苦笑して、手を止めた。

「本当は、お方様の務めではありませんのよ。ただ、北の方様の趣味を、あまり気に入られない御様子で………いつも、悪趣味な人だと仰せですの。」

「もしや、あの、染めがあまい絹やら、其の方(北の方)が?私も、悪趣味な衣を、と思うていたけれど。」

「えぇ。」