久光は一条邸に居ることが多いが、実は北の方(本妻。邸の北側に住む事が多かった事に由来する。)がいる。

(あー、何で来ないのかしら、あの人。あたしが、如何かした?)

北の方は若いが、其れこそ身分が低く、仕えている女房にも、北の方より家格、身分共に高い者は何人かいた。

その筆頭が倭であり、この二人は普段から仲が良くなかった。

ある時、暇でたまらなかったので、物語を語るように申し付けた。

「それくらい、自分でなさい!貴女は、何様なのです!?」

と、キツく言われてしまった。
北の方からすれば、それは、お前だ、ということか。