「倭は厳しいな。」

久光がくすくすと笑いながらそう言った。

「勿論ですとも。家格の高い御家ですのよ?下品な女房ばかりでは、お邸に御座します若君や姫君に悪影響を及ぼしかねませんわ。」

倭は久光の邸でも、模範的な女房である。近頃には珍しく、教養ある女房。零落した上流の姫君であったと聞く。

「庭を、独りで歩きたいんだ………倭、邸内の掃除は下女かにさせておいた筈。後は頼んだよ。」

「承知致しました。」

倭は袿や単衣の裾を持ち上げて車から降り、邸に登った。

「やはり、藤が美しゅう御座いますな。」