女君(藤の君)が見つけられる前、倭は久光のことを「家格の高い」と言ったが、それは皮肉だったのだ。

勿論、女王であった倭の方が、生まれついた身分は高いのだ。

久光よ父が邸の主人だが、血筋の上では、倭に遠く及ばないのだった。

そんな気高い倭だが、藤の君を見て、何故か、この人ならば、と思った。

(この人、あたくしと似ている気がする………如何して?この人ならば、あたくしを、解ってくれるかしら………)

似つかわしくない、この浮世に、藤の君が落ちたのも、理由が、解る気がしたのだ。

(可哀想にね………普段なら、こんなこと、思ったりはしないのに。)