月に叢雲花に嵐 -夢現-

「御存知あられますか?」

女君は首を左右に振り、「あらず」と言う。

「何か、覚えておられることは、御座いまして?何故、このお邸の庭にいらっしゃったのか、等。」

女君は何も言わずに、首を振った。何も知らない様だ。

「倭、いいよ、そこらへんにしておきなさい。女君がお可哀想だ。」

久光は可哀想になったのか、詮索しようとする倭を止めた。

「私は………」

聞こえるか、聞こえないか。
それくらいの、微かな声で女君は何かを言いかけた。