背もたれに肘をつきながら、私を視線で射るウソツキさん。
幾分慣れたものの端正な顔にはちがいないから、見つめられるといまだにひるんでしまう。

「だって、私だけウソツキさんのことなにも知らない。本名だって」
「言ったでしょ? 知らない他人だからこそ話せるんだって。ネコがこうやってベラベラしゃべれるのも、そのおかげでしょ」
「うん……まあ」
 
たしかに、それはそうなんだ。
だって、お兄ちゃん以外の男の人にこんな話をすることも、こんなに打ち解けられることも今までなかったから。
 
きっと、互いの日常の生活範囲にいない人間だからこそ、余計な心配や気後れをしてしまうことがないんだ。
加えて、私に危害を与える気がないのも伝わってくるから。

「ね、髪、サラサラすぎない? なにかしてんの? コレ」
「わっ、びっくりした」
「ハハ、地肌には触れてねーよ」