「んむっ、チョコ与えれば黙ると思って……」
「実際おとなしくなったじゃん。大丈夫。俺のチョコはよく効くから」
 
ハハ、とフード越しの耳もとにウソツキさんの笑う吐息がかかる。
 
耳が熱い。
フードをかぶせられていてよかったのかもしれない。
あたりも薄暗くてよかったのかもしれない。
今、たぶん私真っ赤だから。

「ネコ。こっからがアナタの正念場。よく言う“ピンチがチャンス”ってタイミング。強くなれるよ、俺の魔法入りチョコ食べてるんだから」
「やっぱり子どもだましじゃないですか」
「子どもなんだから、だまされときなさい」
 
ウソツキさんは笑いながら、抱きしめた私の体を左右にわざと揺すった。
なんだか滑稽な動きで、私も「やめてください」と言いながらほんの少し笑ってしまった。