「あたし………帰るね。」
そう言ってあたしは大輔に背を向け、駅へ戻ろうとした。
すると大輔はあたしの腕を掴んだ。
「優香、もう逃げるのはやめろよ。」
大輔はその腕を離す気はないらしい。
「嫌だ……離して………。
手を離して……!あたしは帰るの!!
家に帰ったら明希が……明希がいるかもしれないでしょ!!」
「だから!!!明希はもうこの世にいねぇんだよ!!死んじまったんだよ!!
もういいだろ……!?
いい加減、現実を受け入れろ!!!
もう明希はいないって、わかってるんだろ!?
これ以上壊れていく優香を見たくないんだよ!!!」
大輔は怒りを含んだ声であたしに向かってそう叫んだ。
なん、で………?
「あたしのことはどうでもいいでしょ!!
離してよ……!もうほっといてよ……!!明希はきっとどこかにいるよ……!!」
「どうでもよくない!ほっとけるかよ!!
好きなやつが壊れていくのを、黙って見とけって?そんなの無理に決まってるだろ!
それにここで……ここで何もしなかったら………
俺、明希に合わせる顔がねぇよ……。
決めたんだ、明希の代わりに俺が、優香を守るって………大切にするって……!!」
大輔は、泣いていた。
それは、綺麗な涙だった……。
あたしはただ逃げて、自分一人悲しんで泣いていた。
でも大輔は………あたしや明希のことを思って、泣いている………。
なんて心の綺麗な人なんだろう。
それなのに、あたしは………
「………ううっ…………あああっ………」
涙が溢れてきた。
「優香………今からでも遅くない……ちゃんと明希に会って…………苦しいかもしれない、悲しいかもしれない………それでも、受け入れるしか、他に前に進める方法はないんだ………。」
大輔も辛いし、悲しいに決まってる。
それなのに、あたしの気持ちを優先して………また、泣いているあたしを抱きしめてくれたんだ。



