「……佐城さん?」
凪の姿が見えなくなって佐城さんに視線を戻せば、彼女は黙ったまま頬に手を当てていた。
「佐城さんて、実は結構わかりやすい人だよね」
「っ、普段はこんなになることないから」
「なるほど。彼氏限定なんだ?」
「っ………」
「いいね。君たちを見てると俺も恋人がほしくなってくるよ」
「嘘ばっかり。そんなこと思ってないくせに」
「嘘じゃないよー。思ってるよー」
「そこまであからさまな棒読み、生まれて初めて聞いたよ。思ってなくても普通少しは隠そうとするんじゃないの?」
「残念ながら、俺は嘘がつけない人間なんだ」
「…………」
すっかり火照りの収まった彼女は俺の言葉を受けると、盛大にため息をついた。



