「柑菜────!!」
一瞬にして、穏やかに流れていた時間は終わりを告げた。
勢いよく開け放たれたドアの向こうから、印象強い彼が駆け寄ってくる。
「……凪、ドアは静かに開けなよ」
「うるせー!祐樹に用はないんだよ!」
「うるさいのは凪だよ。そんなに大きい声で呼ばなくても私は聞こえてるから」
「う……ごめん」
「俺と佐城さんに対する態度の違いがあからさますぎない?それ、地味に傷つくよ」
隣に立つ凪を見上げながら言えば、彼はフンっと鼻を鳴らして俺を指さした。
「お前の言うことは嘘があるってわかってるんだからな。そんなこと言って、どーせ俺の謝る姿が見たいだけなんだろ?」
「へぇ、俺のことよくわかってるね。
いつもそんなに見ててくれてるんだ?」
「ちげーよ!誰が好き好んで男の観察なんかするか!俺が見てるのは柑菜だけだっつーの……って、あー違う違う!柑菜っ……」
「…………」



