君を忘れるその日まで。



君がいなくなったのは、あまりにも突然の出来事だった。


君がいなくなった現実を受け止めるのは、あの頃の俺では難しかった。


君を忘れることで、俺は自分を保とうとしていたのかもしれない。


でも、君を忘れていた日々はどこか、空虚だった。


君を忘れても、君と過ごした記憶は俺の中に
確かに生きていた。


「行ってきます」


玄関を出て、一点の曇りもない晴れた空を見上げる。


「…………優里」


いつか、君としたあの約束。


俺はまだ、君以上に大切な人はできない気がするけれど、君が言っていたように君を俺の枷にはしたくないから。


いつかちゃんと君以上に大切な人を見つけて、君に笑顔で報告しに行きたい。


でも、それはまだ当分、先のことだと思うから。


「大好きだよ、優里」


それまでは、


君を忘れるその日までは、


俺は君に、恋をしている。


END。