「通り魔は……捕まったんですか?」
合わせていた手を膝の上において聞くと、お母さんはコクリと頷いた。
「幸いにも、目撃者が何人かいてね。
犯人は……誰でもよかったって、言っていたらしいわ」
「……っ!」
誰でも………よかった?
「ふざけるな…っ!」
畳を叩くにぶい音が、室内に響いた。
「そんな理由で……っ、優里は顔も知らないやつに殺されたのか……!?」
胸中に、今まで抱いたことのない感情が湧き上がってくるのがわかる。
「俺は……っ、そんなやつから優里を守ることもできなかったのか……!」
通り魔への憎悪と、自分に対する不甲斐なさで押しつぶされそうだ。



