緑が広がる森の中。
ツルや草で覆われた、肌色の小さな建物。
そこには幸せに暮らす、少女と怪物がいた。
「マユは、俺を恨まないのか?俺のせいで、お前の家族がー」
「…街の人の勘違いなのでしょう?仕方ない、とは言いきれないけれど、でもきっと」
「誰も悪くなかった…そう思うわ」
途端、優しく風が吹く。
マユの少し伸びた髪が揺れる
「…本当に強く綺麗だな、マユは。」
マユは退廃的なあの街を見下ろし、微笑んだ
「…一人一人、ちゃんと大切なものがあって、苦しいもの、嬉しいものがあって。人間って、とても素敵ね。」
「……そうだな」
明日は命が絶えない限りずっとやってくる。
その明日がとても楽しみになっていた。
あの頃にはもう戻れないけれど
私には、"私を救ってくれた愛すべき怪物"がいる。
ずっと人間を信じられないでいた。
明日が来るのが憂鬱だった
…あの頃に戻るのは死んでも御免だ。
何せ俺には、"無邪気な愛すべき少女"がいる。
そして二人は、森の奥で静かに、幸せに暮らしました。
おしまい