「あのさぁ…お前は俺の何?」


「…か、彼女…ですか?」

「…違うの?まあ、それならそれで」

「違くないです!!」



怒られてるのは分かってるけど、先輩から彼女って認められているんだって思うとついにやけてしまう。


…まあ意地悪な先輩がそれを見逃してくれるわけもなく。


「うにゅっ」



真顔で近寄ってきて私の頬をつまんできた。



「…話、続けていい?」

「ひゃい…ごめんなさい…」



うん、そうだそうだ。

消えろ、煩悩!!



「はぁ…単刀直入に聞くけどさぁ。なんで陽と一緒にいるの?なんで陽の部屋にいんの?いつから?なんでキスされてんの?つーかなんで準備室来なかったの?」



し、し、質問責め…!!



こんなに聞かれてしまったらさすがにもう隠しきれない。

全部話さないと…



「か、帰ろうとしたら…門のところで瑠衣さんに呼び止められて」



その瞬間、先輩がピクっと反応したのを私は見逃さなかった。


それはたぶん… “ 忘れられない人 ” だから。



「…で?」

「2人でカフェに行って…そこで瑠衣さんから2人の話を聞いて…」



そこから先のことは言えなかった。

だって、あれは…自分より先輩との距離が近い瑠衣さんへの、醜くて自分勝手な嫉妬だから。



「…ぐ、偶然カフェに陽先輩がいて…」

「…偶然?」

「それで家まで案内してくれて、紅茶を出してくれて」



先輩は眉間に皺を寄せた。


きっと、この嘘は先輩には通用しない。

けど…本当のことを言う勇気は私にはなかった。