「…え?ちょっと茜、なにしてんの?先輩行っちゃうよ?」

「え?そんなことわかってるよ~!」



いくらなんでも私だってそこまでバカじゃない!!



「いや、そうじゃなくて…」

「大丈夫!!午前中分は目に焼き付けたから!!」

「…なんか用があるから待ってたんじゃないの!?」

「用はない!!ただ見たかっただけ!」

「…本当にストーカーだねあんた」



私は階段を上っていく先輩の後ろ姿をしっかり見送り、教室へ戻ろうと立ち上がった瞬間。


— グイッ!!


「ぐはっ」



ブレザーとブラウスの襟を一緒に引っ張られ、私はヒロインとはとても思えないであろう声を発した。



「おいバカネ!メグ!よくも俺のことおいていってくれたな!!先行くとか聞いてねえぞ」



私のことを引っ張った犯人は、見覚えのある顔……というかもはや見飽きた顔の奴だった。



「「あぁ、ごてん。忘れてた」」



私とメグを睨むその男、坂下陸(さかしたりく)。



私たち3人は一応、幼なじみってやつで。

腐れ縁というやつだろう。幼稚園、小学校、中学校…とまあずっと毎日一緒に登校している。



だけど、今日は先輩ウォッチングのためにいつもより15分早く家を出たんだっけ。

メグも巻き添えにして。

そんでもって陸のことなんかすっかり忘れてたわ。