「はぁ、はぁ…ゴホッゴホッ」


陽先輩は荒い息遣いのまま壁に寄りかかって座り込んでしまった。



「…おい、陽。お前どういうつもりだよ」

「ごめんごめん、ちょっと雄飛のこと試したくなっちゃって…それに、雄飛じゃなくて坂下陸に茜っちのこと迎えに来てもらったら雄飛怒るだろ?」

「ったりめぇだろ、こいつは俺のだ」

「わっ…!」



有馬先輩に腕を引っ張られ、そのまま肩を抱かれた。


な、なにこの状況…!!



「俺から詳しく聞きたい?何があったか」

「茜からでいい。…行くぞ」



テーブルの横に置いてあった私のバッグを掴むと、私の腕を引いて家を出る有馬先輩。


も、もう何がどうなってるのか…


しかもい、今… “ こいつは俺のだ ” って言ったよね??



新堂茜、先輩の一言に心臓を射抜かれてしまいました。


「…門限は?」



黙っていた有馬先輩は、エレベーターに乗った時にやっと口を開いた。



「え?ああ、連絡しておけば基本的に平気です」

「…そう。じゃあこのまま移動」

「は、はい…」



頬が熱い。


掴まれた手から熱が伝わってたらどうしよう、顔赤くない?前髪ボサボサになってない?なんて、何もかも気になってしまう。

恋する乙女ってこんなにドキドキしてるの?


こんなんじゃ心臓がいくつあっても足りないよ…!